白内障治療で眼に挿入する人工レンズには、焦点が1つの「単焦点眼内レンズ」と、2点以上に焦点を合わせられる「多焦点眼内レンズ」があります。
どちらを選ぶかは、術後のライフスタイルに大きく関わる重要な選択です。単焦点眼内レンズは焦点を合わせた距離が鮮明に見える一方、その他の距離では眼鏡が必要になります。多焦点眼内レンズは複数の距離にピントを合わせられるため、術後に眼鏡を使う頻度を減らせる場合があります。
この記事では、単焦点眼内レンズと多焦点眼内レンズそれぞれの特徴、向いている人、費用(保険適用・選定療養・自由診療)について、白内障手術を専門とする眼科医師が解説していきます。
白内障手術では、濁った水晶体を取り除き、代わりに人工の眼内レンズを挿入します。このとき選択する眼内レンズは、大きく「単焦点眼内レンズ」と「多焦点眼内レンズ」の2種類に分かれます。
どちらのレンズを選ぶかによって、術後に眼鏡やコンタクトレンズがどの程度必要になるかが変わってきます。手術後のライフスタイルに直結する選択のため、以下のような点を確認しながら検討することをおすすめします。
これらのご希望や生活スタイルをもとに、検査・カウンセリングを通じて医師と相談しながら最適なレンズを決定します。
単焦点眼内レンズは、近方・遠方・中間距離のいずれか1箇所にピントを合わせられるレンズです。焦点を合わせた距離は鮮明に見えますが、それ以外の距離を見る際には眼鏡が必要になります。
たとえば手元にピントを合わせた場合はデスクワークや読書に適していますが、遠くを見る際には眼鏡が必要です。反対に遠方にピントを合わせた場合は、車の運転やスポーツに適していますが、手元の作業では眼鏡が必要になります。
単焦点眼内レンズを使用した白内障手術は、原則として健康保険の適用対象です。眼の状態や手術内容によっては自由診療となる場合もあるため、診察時にご案内します。
眼内レンズを選ぶ際は、眼の状態とよく見る距離を確認し、術後に眼鏡を使う場面も含めて検討します。
多焦点眼内レンズは、近方・遠方・中間距離のうち2箇所以上にピントを合わせられるレンズです。単焦点眼内レンズと違い、複数の距離にピントを合わせられるため、術後は約8割以上の方が眼鏡を使わずに生活されています。ただし、見え方には個人差があり、すべての場面で眼鏡が不要になることを保証するものではありません。
大きく分けて、近方と遠方(または遠方と中間距離)の2箇所にピントが合う「2焦点眼内レンズ」、近方・中間・遠方の3箇所すべてにピントが合う「3焦点眼内レンズ」、遠方から近方までの5点に焦点を合わせる5焦点眼内レンズ「インテンシティ」など、種類が豊富にあります。
多焦点眼内レンズ手術では、術前の検査とカウンセリングで適応を確認し、患者様の生活スタイルに合わせてレンズを選びます。
| 比較項目 | 単焦点眼内レンズ | 多焦点眼内レンズ |
|---|---|---|
| 焦点数 | 1箇所 | 2箇所以上(2焦点・3焦点・5焦点など) |
| 見え方の鮮明さ | 焦点を合わせた距離は非常に鮮明 | 複数距離をカバーするが、単焦点よりコントラストが劣る場合がある |
| 夜間の見え方 | ハロー・グレアが起こりにくい | ハロー・グレア現象が起こりやすい傾向 |
| 費用 | 原則として健康保険適用 | 選定療養または自由診療(レンズにより異なる) |
| 老眼への対応 | 選んだ焦点距離以外では眼鏡による補助が必要 | 複数距離をカバーするが、細かい作業などでは眼鏡が必要な場合もある |
| 乱視への対応 | 乱視矯正用レンズで対応可能 | 乱視矯正機能付きレンズで対応可能 |
| 眼鏡が必要になる場面 | 焦点以外の距離で必要 | 細かい作業などで必要になる場合がある |
| 向いている人 | 眼鏡の装用に抵抗がなく、焦点を合わせた距離の鮮明さや費用を重視する方 | 眼鏡への依存を減らし、複数の距離を見たい方 |
※画像は焦点の違いを説明するイメージであり、術後の見え方を保証するものではありません。
単焦点眼内レンズで遠方にピントを合わせたイメージです。

2焦点眼内レンズで遠方と近方にピントを合わせたイメージです。

3焦点眼内レンズで遠方・中間・近方にピントを合わせたイメージです。

当院の医師が、単焦点・多焦点眼内レンズの違いを動画で解説します。
【先進会眼科理事長インタビュー】単焦点、多焦点眼内レンズどちらがいい?
多焦点眼内レンズは、光を振り分ける構造と、焦点数・見える距離の範囲を分けて理解することが大切です。
焦点深度拡張型(EDOF)は、焦点の合う範囲を広げる設計を指します。「EDOF」と「回折型」は対立する分類ではなく、シンフォニーのように回折構造を用いたEDOFレンズもあります。見える距離の範囲や光のにじみは製品によって異なるため、EDOFなら一律にハロー・グレアがないとはいえません。
※記載の距離は目安です。すべての製品に共通する焦点距離ではなく、術後の見え方にも個人差があります。
当院では、多焦点眼内レンズの種類や製品ごとの特徴を踏まえ、眼の状態と患者様のご要望に合わせてレンズをご提案しています。取扱いの一例は次の通りです。
ご希望の製品が眼の状態に合うか、選定療養の対象となるかなどは、検査・診察時にご案内します。
レンズ選びで後悔しないために、単焦点・多焦点それぞれが向いている人の特徴を、あらためて整理します。
いずれも最終的な適応の判断は、手術前の精密検査・診察・カウンセリングを通じて医師が行います。多焦点眼内レンズの選び方やデメリットを理解したうえで、見え方に求めることや生活上の不安をお伝えください。
単焦点・多焦点いずれの眼内レンズにも、角膜乱視を矯正する機能を備えた「トーリックレンズ」があります。角膜に乱視のある方は、白内障手術と同時に乱視の矯正も検討できます。対応可能なレンズの種類や適応については、検査の結果をもとに医師が個別にご案内します。
白内障手術でどの眼内レンズを選ぶかによって、費用の仕組みが異なります。
単焦点眼内レンズを使用した白内障手術は、原則として健康保険が適用されます。片眼あたりの費用は、1割負担で約1.5万円、2割負担で約3万円、3割負担で約4.5万円が目安です。眼の状態や診療内容によって実際の費用は異なり、自由診療となる場合もあるため、検査時にご案内します。
2020年4月から、一部の多焦点眼内レンズを用いた白内障手術が選定療養の対象となりました。対象の手術では、保険診療分の自己負担額に加え、多焦点眼内レンズを選ぶための追加費用をご負担いただきます。
弊院の公式料金ページでは、白内障手術(選定療養)の料金を片眼398,000円(税込)、別途手術代とご案内しています。乱視用レンズは55,000円(税込)の追加となります。
※掲載料金は2026年9月16日時点のものです。適応するレンズや費用の総額は、検査・診察時にご案内します。

※図の保険診療部分にも、自己負担割合に応じたお支払いが必要です。
選定療養の対象外となるレンズや手術方法を選ぶ場合は自由診療となり、手術費用・レンズ代ともに全額自己負担となります。
当院のレーザー白内障手術は片眼968,000円(税込)、乱視用レンズは110,000円(税込)の追加です。レンズや手術方法によって費用は異なりますので、ご希望の治療にかかる総額を事前にご確認ください。
※掲載料金は2026年9月16日時点のものです。
単焦点眼内レンズによる手術費用や、選定療養の保険診療部分は、高額療養費制度の対象となる場合があります。多焦点眼内レンズの追加費用や自由診療の手術費用は対象外です。自己負担の上限額は年齢や所得などで異なるため、ご加入の医療保険にご確認ください。
多焦点眼内レンズを希望する場合、レーザー白内障手術も選択肢となります。
多焦点眼内レンズは、わずかな位置のズレや歪みが術後の見え方に影響しやすいため、緻密な正確性が求められます。フェムトセカンドレーザーを用いた手術では、0.01mm単位での水晶体の切開や精度の高い手術プログラミングが可能となり、精密さが重視される多焦点眼内レンズとの相性が良いとされています。
ただし、レーザーを用いても合併症のリスクがなくなるわけではありません。眼の状態や希望するレンズに応じて、手術方法を検討します。
どちらが合うかは、患者様の眼の状況やライフスタイル、術後の見え方へのご要望によって変わるため、一概にどちらが良いとは言えません。単焦点眼内レンズは焦点を合わせた距離がとても鮮明に見えますが、それ以外を見る際は眼鏡が必要です。多焦点眼内レンズは複数の距離にピントを合わせられますが、単焦点眼内レンズに比べて一箇所あたりのコントラストやシャープさが劣る場合があります。
多焦点眼内レンズの光学構造によって、暗い場所で光の周囲に輪が見えるハローや、強いまぶしさを感じるグレアが生じる場合があります。徐々に慣れる方もいますが、程度や経過には個人差があります。見え方の変化をすべてレンズへの慣れと自己判断せず、気になる症状がある場合は当院へご相談ください。
多焦点眼内レンズを用いた手術は選定療養または自由診療となります。選定療養の対象となる場合は、手術部分の保険診療にかかる自己負担額と、レンズなどの追加費用が必要です。自由診療では全額自己負担となります。対象のレンズや白内障手術の費用・流れを確認し、ご希望に合わせて検討します。
単焦点眼内レンズは、焦点を合わせた1箇所の距離であれば非常に鮮明な見え方が得られますが、その他の距離では眼鏡での補正が必要です。多焦点眼内レンズは複数の距離をある程度カバーできますが、各距離のコントラストは単焦点眼内レンズよりやや劣る場合があります。実際にどの程度の見え方が期待できるかは、眼の状態によって個人差があるため、検査の結果をもとに医師からご説明します。
単焦点眼内レンズは、選んだ焦点距離以外を見るときに眼鏡が必要になります。たとえば遠方に合わせた場合は読書などの手元作業で、近方に合わせた場合は遠くを見る場面で眼鏡による補助が必要です。眼鏡を使う場面を想定し、普段よく見る距離を医師にお伝えください。
多焦点眼内レンズは白内障の治療を目的としたレンズですが、複数の距離にピントを合わせられる構造上、老眼による見えづらさもあわせて改善できる点が特徴です。老眼のみを理由に手術を検討されている場合も、検査の結果によっては手術が可能な場合がありますので、医師にご相談ください。
術後の見え方や眼内レンズの状態によって、交換や位置を修正する手術を検討する場合があります。交換が可能か、再手術が適切かは医師が判断します。交換を前提とせず、術前に見え方の希望を十分に相談することが大切です。
角膜に乱視がある方には、単焦点・多焦点それぞれに乱視矯正機能を備えた「トーリックレンズ」が用意されています。乱視の強さや眼の状態によって適応するレンズが異なるため、検査の結果をもとに医師がご提案します。
眼内レンズは耐久性の高い素材で作られており、基本的に半永久的に使用できます。ただし、術後に眼の病気や見え方の変化が起こらないという意味ではありません。術後も医師の指示に沿って定期的な診察を受けてください。
見え方が安定するまでの経過や慣れるまでの期間には個人差があります。多焦点眼内レンズでは、ハロー・グレアなどに違和感を覚える方もいますが、徐々に気にならなくなる場合があります。症状が気になる場合や日常生活に支障がある場合は、診察時にお伝えください。
眼の状態によっては、老眼の改善を目的として検討できる場合があります。ただし、水晶体を取り除く手術であり、白内障の症状が軽い方ではコントラスト低下を感じやすい場合もあります。適応と期待できる見え方、リスクを検査・診察で確認します。
白内障を伴わない方には、水晶体を残して近視・乱視などを矯正するICL(眼内コンタクトレンズ)や、老眼にも対応するIPCLが選択肢となる場合があります。これらは白内障手術で水晶体を置き換える眼内レンズとは異なる治療です。治療ごとに適応・リスク・費用が異なるため、どの方法が合うかを検査・カウンセリングでご相談ください。
白内障治療にあたり、単焦点眼内レンズにするか多焦点眼内レンズにするか、迷われている方は多くいらっしゃいます。単焦点眼内レンズは費用を抑えつつ焦点を合わせた距離の鮮明さを重視できる一方、多焦点眼内レンズは複数の距離をカバーし眼鏡への依存を減らせる可能性があります。それぞれにメリットとデメリットがあるため、注意点や適応の可否を理解したうえで手術を検討することが大切です。
レンズの選択は術後の見え方やライフスタイルに大きく影響するため、当院での検査・カウンセリングを通じて、ご自身に合ったレンズを慎重にご検討ください。

監修:岡 義隆
医療法人先進会 理事長 / 先進会眼科 理事長
専門分野白内障手術・屈折矯正手術
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