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医療者に選ばれる眼科医療

先進会眼科コラム

白内障

 

白内障手術は保険適用内?眼内レンズの種類とともに解説

白内障の手術で用いられる眼内レンズは、“単焦点眼内レンズ”と“多焦点眼内レンズ”の2種類に分けられます。
単焦点眼内レンズには、保険が適用され、多焦点眼内レンズには、選定療養として部分的に適用されるケースと、自由診療で全額負担のケースがあります。

【この記事でわかること】

  • 白内障とは
  • 白内障手術で用いられる眼内レンズの種類
  • 白内障手術における保険適用の有無
  • 白内障手術における費用の目安
  • 白内障手術の費用の負担を軽減する方法

白内障の手術を検討するにあたり「保険は適用されるの?」「費用はどのくらいかかるのだろう」と、気になる方も多いのではないでしょうか。
保険が適用されるか否かは、手術で扱う眼内レンズによって決まるので、事前にその種類を把握しておきたいところです。

そこで本記事では、白内障手術における保険適用の有無と、眼内レンズの種類を詳しく解説します。
ご自身で納得のいく選択ができるよう、ぜひご参照ください。

白内障とは

眼内レンズについて知る前に、白内障という病気の概要をおさらいしておきましょう。

白内障とは、目の中でレンズの役割を果たす、“水晶体”が混濁する病気です。
水晶体は目のピントを合わせ、網膜に像を映し出すはたらきがありますが、白内障によって水晶体が混濁すると、網膜にうまく像を映し出せなくなるため、視力の低下を招くのです。

なお、白内障を発症すると視力の低下のほかにも、次のような症状が現れます。

【白内障の代表的な症状】

  • 視界が全体的にかすむ
  • 光を過敏にまぶしく感じる
  • 暗いときと明るいときの見え方が違う
  • 物がだぶって見える

これらの症状を引き起こす白内障の主な原因は、加齢だと考えられています。
発症すると、自然治癒や簡易的な治療で改善できないうえ、放っておくとどんどん進行してしまいますから、根本的に治すには手術を行うほかありません。
日常生活に支障をきたすほど症状が進行した場合は、手術を検討しましょう。

白内障手術で用いられる眼内レンズの種類

白内障手術では、濁った水晶体を吸引し、代わりとなる眼内レンズを挿入します。
手術で用いられる眼内レンズは、単焦点眼内レンズと多焦点眼内レンズの2種類に大別されますが、それぞれ見え方に違いがあります。

単焦点眼内レンズ

単焦点眼内レンズは、近方・中間・遠方のいずれか1か所にピントを合わせられるレンズです。
ピントを合わせた距離の範囲内で、非常にクリアな視界を得ることができます。
そのため、日常的に長距離運転をする方や手元作業をする方など、見え方の質の高さを重視する方に選ばれることの多い眼内レンズです。

ただ、焦点の合っていない範囲はぼやけるため、術後でもメガネやコンタクトレンズが必要となる場合もあります。

関連診療項目:多焦点眼内レンズと単焦点眼内レンズの違い

多焦点眼内レンズ

近方・中間・遠方のいずれか2か所、ないし3か所にピントを合わせられるのが、多焦点眼内レンズです。
最近では、白内障手術後の「より良い見え方の追求」を目的として眼内レンズの開発が進み、従来の近方・中間・遠方に加え、「近中」「遠中」の計5か所にピントを合わせることが可能な多焦点眼内レンズも登場しています。

幅広い距離にピントが合うため、日常生活において、ほとんどの場面を裸眼で過ごせるようになります。

メガネやコンタクトレンズをつけず、快適な毎日を送りたいとお考えの方は、多焦点眼内レンズを選ぶのが望ましいでしょう。

関連診療項目:多焦点眼内レンズの種類とメーカー|費用についても解説

白内障手術における保険適用の有無

白内障の手術では、先ほど説明した眼内レンズの種類によって、保険が適用されるか否か、あるいは部分的に適用されるのかが決まります。

  1. 保険が適用されるケース
  2. 選定療養として部分的に保険が適用されるケース
  3. 自由診療として保険が適用されないケース

単焦点眼内レンズを用いる場合は、保険が適用されるのが一般的です。
一方、多焦点眼内レンズを用いる場合は、国内で承認を受けたものと、海外では認可を受けているものの、国内では未承認されていないものとで、保険適用の有無が異なります。

ここからは、その詳細を解説していきます。

保険が適用されるケース

白内障手術のうち、単焦点眼内レンズを用いて手術する場合は、保険が適用されます
保険が適用されると、患者の年齢や所得に応じて、費用の負担割合が1~3割となります。

選定療養として部分的に保険が適用されるケース

多焦点眼内レンズのなかでも、国内で承認を受けている眼内レンズに関しては、“選定療養”として、部分的に保険が適用されます。

選定療養とは、自由診療と保険診療を併用できる制度のことです。
患者の負担を減らし、治療の選択肢の幅を広げることを目的に、2020年4月より新設されました。

選定療養を受けると、レンズ代を自費で負担する必要があるものの、そのほかの手術に関する費用に対しては保険が適用されます。

自由診療として保険が適用されないケース

多焦点眼内レンズのなかでも、海外のみで認可を受けている国内未承認の眼内レンズを用いる場合は、保険が適用されません。
つまり、自由診療として、手術にかかるすべての費用をご自身で負担するということです。

白内障手術における費用の目安

ここでは白内障手術における費用の目安を、上記で説明したケース別に解説します。

  1. 保険が適用されるケース
  2. 選定療養として部分的に適用されるケース
  3. 自由診療として保険が適用されないケース

それでは順に見ていきましょう。

保険が適用されるケース

前述した通り、単焦点眼内レンズを用いた白内障手術には保険が適用され、患者の年齢や所得に応じて、費用の負担割合が異なります。

以下に、単焦点眼内レンズの費用の目安をまとめました。

【単焦点眼内レンズを用いた白内障手術の費用の目安(片目を手術した場合)】

年齢所得における規定負担割合支払い額
70歳未満規定なし3割6万円前後
70歳以上75歳未満現役並みの所得者3割6万円前後
上記以外の方2割4万円前後
75歳以上現役並みの所得者3割6万円前後
上記以外の方1割1万5,000~2万円

通常、単焦点眼内レンズを用いた白内障手術の費用には、20万円程度かかります。
そこに保険適用による負担割合を乗ずると、上記の支払い額が算出できます。
両目の治療を受ける場合は、支払い額を2倍にした額がおおよその目安です。

なお、“現役並みの所得者”とは、住民税の課税所得が145万円以上の被保険者、またはその方と同一の世帯にいる被保険者のことです。
したがって白内障を治療する前年に、145万円以上の収入を得ていた場合は、年齢にかかわらず、負担割合が3割となります。

参照元:厚生労働省「(参考)医療保険制度の「現役並み所得者」について」

選定療養として部分的に保険が適用されるケース

次に、国内承認済みで、選定療養が適用される多焦点眼内レンズを用いて手術する場合の費用の目安を解説します。
選定療養では、レンズ代は自費負担になるものの、そのほかの手術に関する費用に対しては保険が適用されます。

国内承認済みの多焦点眼内レンズの費用は、片目で40万円程度、両目で80万円程度です。
くわえて、手術費用を保険適応とする場合、が片目で6万円程度、両目で12万円 程度かかります。
そして、レンズ代と手術費用を足した金額が、選定療養が適用される場合の費用の目安です。

関連診療項目:選定療養とは

自由診療として保険が適用されないケース

国内未承認の多焦点眼内レンズを用いた手術費用の目安は、片目で90万~160万円程度、両目では180万~320万円程度です。
保険が適用されない自由診療にあたるので、費用を全額負担しなければなりません。

費用がかさむことは避けられませんが、その一方で、海外で多く流通している多焦点眼内レンズには、よりご自身に合ったものを選べるというメリットがあります。
眼内レンズを選ぶ際は、値段だけではなく、眼内レンズの特徴やご自身との適合性についても考慮してみてくださいね。

白内障手術の費用の負担を軽減する方法

ここでは、白内障手術の費用の負担を軽減できる“医療費控除”の仕組みを紹介します。

医療費控除とは、前年の1年間に、医療費を支払った場合、一定の金額を所得から差し引くことで所得税を軽減できる制度です。
医療費控除の対象には、国内未承認の多焦点眼内レンズをはじめとする、保険適応外の医療費も含まれます。

以下では、国内未承認の多焦点眼内レンズを用いて手術する際、医療費控除によって、どのくらい負担が軽減されるのかをシミュレーションしていきます。

白内障手術で医療費控除を受けた場合のシミュレーション

1年間の所得が800万円の方が、国内未承認の多焦点眼内レンズを用いた白内障手術を、100万円で受けた場合は、所得税がどれだけ安くなるのでしょうか。

医療費控除額は、 “1年間に支払った医療費-保険金などで補填される金額-10万円(合計所得金額が200万円未満の人は合計所得金額×5%)”という計算式で算出できます。
今回のケースですと、国内未承認の多焦点眼内レンズは保険適用外のため、差し引かれる保険金は存在せず、医療費控除額は“100万円-10万円=90万円”となります。

続いて、所得税の計算を確認していきましょう。
所得税を求める計算式は、“課税される所得金額(1年間の所得-所得から差し引かれる金額)×税率-控除額”です。

医療費控除額は、上記の計算式のなかにある、“所得から差し引かれる金額”に該当します。
なお、税率や控除額については、課税される所得金額ごとに定められているので、以下をご参照ください。

【所得税の早見表(一部抜粋)】

課税される所得金額税率控除額
195万円超330万円以下10%9万7,500円
330万円超695万円以下20%42万7,500円
695万円超900万円以下23%63万6,000円

今回は1年間の所得が800万円なので、税率が23%、控除額が63万6,000円です。

以上の条件のもと、所得税を計算すると、“(800万円-90万円)×23%-63万6,000円=99万7,000円”と計算できます。
医療費控除がない場合は、“800万円×23%-63万6,000円=120万4,000円”なので、実に20万7,000円もの所得税を安くすることができるのです。

このように、医療費が高額になった場合でも、負担を軽減できる制度が整っていることから、費用が気になって躊躇していた方も、安心して白内障手術を受けられますよ。

参照元:国税庁「所得税の税率」

まとめ

本記事では、白内障手術における保険適用の有無と、眼内レンズの種類を解説しました。

白内障の手術では、単焦点眼内レンズと多焦点眼内レンズのどちらかが用いられます。
単焦点眼内レンズには保険が適用され、多焦点眼内レンズには、選定療養として部分的に保険が適用されるケースと、自由診療で全額負担するケースがあります。

それぞれのメリットを踏まえたうえで、ご自身の状況から、納得のいく選択をしましょう。

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監修者
岡 義隆
執筆:岡 義隆

日本眼科学会認定眼科専門医
日本白内障屈折矯正手術学会 理事
先進会眼科 理事長

略歴

聖マリア病院 眼科 外来医長
福岡大学筑紫病院 眼科
村上華林堂病院 眼科
福岡大学病院 救急救命センター
福岡大学病院 眼科
愛知医科大学卒業
福岡県立嘉穂高校卒業

医師資格番号

医師免許番号 381664
保険医登録番号 福医29357

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