老眼の改善方法は?予防方法とともに解説
老眼は、眼内組織の老化により引き起こされる視力異常の一種ですが、トレーニングや特定の栄養素の摂取により改善を図れます。
【この記事でわかること】
- 老眼とは
- 老眼になる原因・メカニズム
- 老眼への有効な対処法
- 老眼を予防・改善する方法
- 老眼を放置するとどうなる
「本の文字が読みづらくなってきた」「近くを見ると疲れる」
このような症状が当てはまるのであれば、老眼を疑ってみてもよいかもしれません。
老眼は、加齢により誰もがなりうる、目のトラブルです。
この記事では、老眼のメカニズムや対処法、予防法をお伝えします。
老眼にお悩みの方はもちろん、予防方法を知りたい方もぜひ本記事を参考にしてみてくださいね。
老眼とは?
老眼は、正式名称を老視といい、近くにある対象物が見えにくくなる目の症状の一つです。
加齢により、レンズの役割を果たす水晶体の柔軟性が失われ、ピント調節機能が上手く働かなくなることが、直接の原因です。
一般的には40代後半から、早い方では30代頃から老眼の症状が出始めます。
“老眼”という名前がついているからといって、若い方でも安心はできないのです。
老眼の症状
老眼の主だった症状としては、下記のようなものが挙げられます。
【主な老眼の症状】
- 近くの文字が読みにくくなる・近くの物が見えにくくなる
- 暗い環境において視力が著しく低下する
- 作業で目が疲れやすくなる
- 目の奥に疲労感や痛みを感じる
- 頭痛・倦怠感を伴う
加齢とともに老眼の諸症状が表れる方が多いので、心当たりがある場合は早めの眼科受診をおすすめします。
老眼になりにくい人の特徴
歳を重ねたからといって、すべての人が老眼になるわけではありません。
老眼になりにくい人には下記のような特徴、共通点があることがわかっています。
【老眼になりにくい人の特徴】
- 紫外線を避けている
- 適切な度数のメガネ・コンタクトレンズを使用している
- 手元ばかりを見ない
- アンチエイジングに取り組んでいる
目の健康には、日頃の生活習慣の積み重ねが大きく関わってきます。
肌だけではなく、水晶体も、長期にわたり紫外線に晒されることで老化が進むという事実をご存じでしょうか。
スキンケアと同様、目も、UVサングラスや帽子などで、紫外線から守ってあげる必要があるのです。
また、目に負担の少ないメガネやコンタクトレンズを選ぶことも大切です。
度数の合っていないメガネやコンタクトレンズを使用していると、ピント調節機能を担う「毛様体筋」に負担がかかり、どんどん凝り固まっていきます。
同様に、スマートフォンや読書など、手元ばかり見る時間が長いと、毛様体筋や水晶体を酷使することとなります。
そのため、このような習慣は極力避けるのが賢明です。
さらに、アンチエイジングによって、全身の組織を若々しくしなやかに保つことで、結果的に老眼の予防にもなります。
老眼になる原因・メカニズム
続いて、老眼を引き起こす生体のメカニズムを解説していきましょう。
先述した毛様体筋と水晶体は、ピント調節機能や目のレンズ機能を司りますが、これらの組織の老化が進むと、柔軟性が失われて適切に焦点を合わせることが難しくなります。
毛様体筋は収縮と弛緩により、水晶体の厚みを調節していますが、老化や、長時間・長期にわたる酷使で、硬化してしまいます。
それによって次第に水晶体の厚みの調節ができなくなり、ピント調節機能が低下、「近くの物が見づらい」という状態に陥ってしまうのです。
また、毛様体筋が正常であっても、老化により水晶体の柔軟性が失われ、伸縮に支障が出る場合もあります。
スマホの使い過ぎにも注意
日頃の生活習慣いかんによっては、若い方でも老眼になるリスクがあります。
現代社会において、その最たる例として挙げられるのが、「スマホ老眼」でしょう。
スマホ老眼は、文字通りスマートフォンの使用を原因として引き起こされる老眼です。
スマートフォンの使い過ぎは、老眼発症のトリガーを引きかねないということを覚えておきましょう。
老眼への有効な対処法
老眼には、下記のような対処法があります。
- 老眼鏡を使う
- 遠近両用メガネをかける
- 遠近両用コンタクトレンズをつける
- 手術する
医師とも相談のうえ、ご自身に合った選択肢を選び、老眼と上手く付き合っていきたいものです。
老眼鏡を使う
老眼鏡は、リーディンググラスともよばれ、近くの対象物を見やすくすることを目的としたメガネです。
老眼の方が装着することで、本や新聞などの文字を読みやすくなります。
老眼であれば第一の選択肢となりますが、後述する別のタイプのメガネを使う方も増えてきています。
遠近両用メガネをかける
老眼鏡が、近距離に特化したメガネである一方、近くと遠くを同時に見ることができるのが遠近両用メガネです。
遠近両用メガネには、複数の距離でピントを合わせられる「多焦点レンズ」が採用されており、ピントを合わせられる距離や、焦点の数はさまざまです。
老眼鏡とは違い、遠くの物を見るたびにメガネをかけ直す手間がなくなります。
また、見た目は一般的なメガネと変わらないため、若い方を中心に使用されることが多いアイテムです。
遠近両用コンタクトレンズをつける
先述した多焦点レンズは、コンタクトレンズにも採用されています。
多焦点レンズが使われた遠近両用のコンタクトレンズの装着は、メガネに抵抗のある方やスポーツをされる方などにとって、非常に有用な選択となるでしょう。
「交代視タイプ」と「同時視タイプ」の2種類があり、前者は視線を変えることで遠近どちらの視力もカバーできます。
手術する
手術によっても、老眼の改善が可能です。
眼科医療の発展にともない、手術によって視力を回復される方も増えてきています。
これらの眼科手術は短時間で完了し、手術後はメガネやコンタクトレンズ装着の必要もありません。
なお、老眼の改善目的で行われる手術は、モノビジョンレーシックとIPCLマルチ、多焦点眼内レンズ手術に大別されます。
モノビジョンレーシックとは、左右の視力に差をもたせることで、老眼を改善する方法です。
一方の目は近くを、他方の目は遠くを見られるように調整することで、両目で見た際に遠近のどちらも見えるようになります。
IPCLマルチとは、水晶体を取り除かずに眼内にレンズを挿入する手術です。老眼だけでなく近視や遠視、乱視の矯正も可能な治療法で、自然な視力を保持しつつ手元の視力を改善するための効果的な方法として注目されています。
ただし、 どちらの手術も加齢により水晶体に濁りが見られる場合、基本的に手術は受けられません。
多焦点眼内レンズ手術では、水晶体を除去したうえで多焦点の人工レンズを挿入し、老眼を根本的に改善します。
より自然に近い見え方を取り戻せる方法である一方、手術となるため、医師としっかりと打ち合わせたうえで、手術に臨みましょう。
多焦点眼内レンズの詳細は、こちらをご覧ください。
多焦点眼内レンズ手術
多焦点眼内レンズの種類とメーカー|費用についても解説
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老眼を予防・改善する方法
そもそも老眼にならないよう日頃から気をつけておくことも、重要です。
老眼を予防するうえでは、下記のようなトレーニング、生活習慣が有効です。
- 目のストレッチを行う
- ペンさし運動で目の筋肉をほぐす
- 食生活を変える
- 睡眠の質を上げる
- 紫外線を避ける
続いて、これらの内容や具体的なやり方を解説します。
目のストレッチを行う
焦点を変える、目のストレッチは老眼防止に効果を期待できます。
先述したスマホ老眼の予防にも有効であるため、ぜひデスクワークや読書の合間に挑戦してみましょう。
長時間、近くを見つづけなくてはいけない場合は、10分に1回程度、手元から目を離し、遠くの壁や窓の外を眺めてみてください。
焦点距離を変えることで毛様体筋および水晶体に刺激を与え、緊張を解く効果が期待できます。
遠方を見れば、毛様体筋および水晶体はリラックスしますし、収縮と弛緩を切り替えることで毛様体筋内の血行が促進されます。
ペンさし運動で目の筋肉をほぐす
より重点的に老眼予防ケアを行いたいのであれば、ペンさし運動がおすすめです。
ペンさし運動は、ペンとキャップを対象物として使い、目の筋肉をほぐすための運動です。
下記のステップに沿って、無理のない範囲で実践してみてください。
【ペンさし運動のやり方】
ステップ➀ | キャップつきのペンを準備し、キャップを外す。 |
ステップ② | 右手はキャップを、左手はペンを持つ。 右手のキャップは胸よりも低い位置に、左手のペンは頭より高い位置に持ってくる。 |
ステップ③ | まばたきした後、ペン先に目線を移し、凝視したままゆっくりとペンをキャップのほうへ動かし、はめる。 ペンがキャップにはまったらまばたきする。 |
ステップ④ | ステップ②~③を1セットとして、1日20回程度行う。 |
ペンさし運動のポイントは、顔は動かさず、眼球のみ動かすことです。
これにより、眼球全体の運動と、ピント調節機能への刺激がくわわり、老眼の予防を図れます。
食生活を変える
アントシアニンやルテインを含む食品も、意識的に毎日の食事に取り入れたいものです。
どちらも、植物が作り出す人間に有益な物質“ファイトケミカル”の一種であり、高い抗酸化作用を有するため、目の健康の心強い味方です。
アントシアニンはブルーベリーに多く含まれており、眼精疲労の回復に卓効があるとされます。
“視力改善”を謳ったサプリメント等に配合されることの多い成分でもあるので、ご存じの方も多いのではないでしょうか。
一方のルテインは、ほうれん草やブロッコリーに多く含まれており、抗酸化作用に優れるとともに、ブルーライトをはじめとした光の刺激から目を保護する効果があります。
パソコンやスマートフォンを長時間見ることの多い方は、ぜひとも摂取しておきたい成分といえます。
良質な睡眠を確保する
健康の基本となる良質な睡眠は、老眼予防にも効果を発揮します。
睡眠不足が続くと、身体の各組織の回復が遅れ、同時に体内の炎症値を示す“炎症マーカー”が上昇します。
こうなると、眼球内の毛様体筋や水晶体も少なからずダメージを受け、組織の老化につながりかねません。
さらに、睡眠不足は、自律神経の乱れをも引き起こします。
人間の身体は、興奮・緊張状態に導く交感神経と、リラックス状態へと導く副交感神経の2つによってコントロールされています。
両者は互いにバランスを保っているのですが、睡眠不足をはじめとしたストレスによって、このバランスは、いとも簡単に崩れてしまうのです。
たとえば交感神経優位な状況が続くと、目の神経、筋肉の緊張がとれず、疲労の蓄積や炎症を招きます。
このような状況を避けるためにも睡眠は、量、質ともにしっかりと確保しましょう。
紫外線・ブルーライトを避ける
紫外線やブルーライトは、健康な目の大敵です。
そのため、日常生活においては極力、これらの光線に曝露しないように気をつけなければなりません。
具体的には、サングラスやUVカットメガネをかけ、太陽の直視を避けましょう。
また、パソコンやスマートフォンなど、ブルーライトを発する機器には、ブルーライトカットフィルムを貼るのも有効です。
老眼を放置するとどうなる?
老眼を放置することで、日常生活に支障をきたすおそれがあります。
放置すれば、先述したように、老眼の主症状である“本や新聞が読みにくい”“照度が低い環境で視力が落ちる”といったわずらわしさを感じながら生活していくこととなります。
精神的なストレスはもちろんですが、眼精疲労により、肩こりや頭痛といった身体トラブルにも発展しかねません。
また、視力が限定された状態で生活するため、転倒や衝突のリスクをも上昇させます。
そうした危険を避けるためにも、老眼の症状を覚えた場合は、すみやかに眼科を受診のうえ、適切に対処しましょう。
まとめ
今回は老眼のメカニズムと、改善方法を紹介しました。
水晶体や毛様体筋といった眼内の生体組織が老化した結果である”老眼”になると、ピント調節が上手くいかなくなり、近距離が見づらいといった症状を呈します。
しかし、老眼になっても、遠近両用メガネ・コンタクトレンズの装着や、手術により改善を図れます。
また、目のトレーニングやUVケア、食生活の改善による予防も可能なので、ぜひ今日から毎日の生活に取り入れてみてください。
先進会眼科では、先進的な眼科医療を提供しております。
IPCLマルチやレーシック手術なども承っておりますので、老眼にお悩みの方はぜひ一度ご相談ください。
日本眼科学会認定眼科専門医
日本白内障屈折矯正手術学会 理事
先進会眼科 理事長
略歴
聖マリア病院 眼科 外来医長
福岡大学筑紫病院 眼科
村上華林堂病院 眼科
福岡大学病院 救急救命センター
福岡大学病院 眼科
愛知医科大学卒業
福岡県立嘉穂高校卒業
医師資格番号
医師免許番号 381664
保険医登録番号 福医29357