老眼は認知症の引き金になりえる?その理由を解説
老眼とは、目の中にある水晶体の調節力の低下によって、近くの物が見えにくくなった状態です。
加齢に伴って引き起こされる老眼は、実は、認知症が発症するリスクを高めることをご存じでしょうか?
本記事では、老眼と認知症の関係性を紐解いていきます。
老眼の矯正方法も紹介しているので、「近くの物が見えにくい……」と感じ始めた方は、最後までご覧ください。
老眼が認知症発症の引き金になる?
そもそも認知症とは、脳のさまざまな病気によって神経細胞のはたらきが悪くなり、認知機能(記憶力、判断力)が低下している状態です。
症状が進行すると、日常生活を送ることが困難になります。
老眼によって物が見えにくくなると、脳への刺激が減って認知機能の低下を引き起こし、認知症のリスクが高まります。
以下から、老眼が認知症の発症リスクを高めるメカニズムを、より詳細に見ていきましょう。
視力低下が認知機能に悪影響を及ぼすメカニズム
人間は、目から多くの情報を得ていますが、この視覚によって取り入れる情報は、臭覚や聴覚、触覚に比べて、圧倒的に多くなります。外部情報の9割を目から得ていると言われています。
そのため、私たちの“目”が脳、すなわち認知機能につながる大切な感覚器官であることは間違いありません。
しかし、老眼によって物が見えない状態が続くと、必然的に脳に入る情報は少なくなります。
くわえて、目が見えないストレスから精神的にふさぎ込むようになると、外出したり新しいことにチャレンジしたりする機会が減ります。
その結果、脳への刺激が少なくなって、認知機能が低下するので、視力の良い方に比べて認知症を発症するリスクが高まるのです。
老眼を放置することによるほかのリスク
老眼によって見えにくい状態を放置していると、ピントを常に合わせようと目を酷使するため、“眼精疲労”も引き起こします。
目の周囲や肩の筋肉が常に緊張している状態が続くため、頭痛や肩こりなどが引き起こされ、体の調子が悪くなることがあるのです。
このような体の不調が、老眼による見えにくさによって引き起こされているケースは多々あります。
そのため、手元が見えにくい症状だけでなく、体の不調も感じている場合は、眼科を受診するとよいでしょう。
老眼の矯正方法
「老眼は早めに矯正すべき?」と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、認知症のリスクを減らすためにも、できるだけ早く矯正するのが賢明です。
ただし、老眼を早期に矯正したからといって、認知症を確実に防げるわけではありません。
老眼を早めに改善する最大の利点は、物がはっきりと見えることによる生活の質の向上です。
活動的・健康的に生き生きとした生活を送ることができれば、結果的に認知症予防につながることを覚えておきましょう。
なお、老眼の矯正は、老眼鏡や遠近両用メガネ、コンタクトレンズ、手術で対応できます。
それぞれについて、次項で詳しく解説します。
老眼鏡・遠近両用メガネ
老眼に対する王道の矯正方法といえば、老眼鏡です。
老眼鏡には、近くだけにピントを合わせるスタンダードなものと、近くと遠くの両方にピントを合わせる遠近両用メガネとよばれるものがあります。
新聞や本、スマートフォンなどの手元を見る際に使用すれば、老眼を手軽に矯正できる便利なアイテムです。
遠近両用メガネであれば、遠くにもピントが合うぶん、かけ外しやかけ替えが不要というメリットがあります。
ただし、慣れるまでに少し時間がかかるため、心配な方は老眼鏡から始めてみるのがよいかもしれません。
なお、老眼鏡はレンズが小さいと視野が狭くなるため、大きめのレンズを選ぶのがおすすめです。
その際は、眼科に出向いて目の状態を検査してから、処方箋をもとに正確な老眼鏡を専門店で作成するのがよいでしょう。
コンタクトレンズ
老眼を矯正するコンタクトレンズを選ぶなら、遠近両用タイプがおすすめです。
近くと遠くの両方の度数をうまく配置したレンズのため、どちらも比較的ピントを合わせやすく、何より視野が広いことで裸眼のような見え方を叶えてくれます。
「老後も積極的に身体を動かして、スポーツやアウトドアの趣味に勤しみたい!」という方にぴったりといえます。
なお、一般的なコンタクトレンズと同様に、基本的なお手入れが必要なことは留意しておきましょう。
手術
老眼は、手術によって改善することも可能です。
現在は、単焦点眼内レンズと多焦点眼内レンズの、どちらかを目の中に入れる2種類の術式があります。
単焦点眼内レンズは、近く(30~40cm)と遠く(5m以上)のどちらかにピントを合わせるレンズです。
一方で、多焦点眼内レンズは、近くや遠くだけでなく、中間距離も見えやすくなるレンズです。
「メガネやコンタクトレンズの煩わしさから根本的に解放されたい」という方にとっては、非常に優れた矯正方法といえるでしょう。
ただし、双方の術式にはメリット・デメリットや、向き・不向きが存在するため、眼科を一度受診し、自身が適応となるのかを判断したうえで手術に踏み切るのが大切です。
老眼による目えにくさを解消することは、認知症の発症リスクを抑える
本記事では、老眼による目えにくさが、なぜ認知症の発症リスクを高めるのかを解説しました。
老眼による視力の衰えによって、視覚情報が脳へ伝わらなくなると、脳への刺激が少なくなり認知機能が低下します。
さらに見えにくさによる日々のストレスは、外出する機会や、新しいことにチャレンジする意欲を奪いかねません。
老眼による見え方を改善し、認知症の発症リスクを抑制するには、老眼鏡や遠近両用メガネ、コンタクトレンズ、手術などで適切に矯正していきましょう。
先進会眼科では、老眼を矯正する方法の一種である多焦点眼内レンズによる手術が可能です。
自身が手術の適応となるか知りたい方は、お気軽に当院へご相談ください。
日本眼科学会認定眼科専門医
日本白内障屈折矯正手術学会 理事
先進会眼科 理事長
略歴
聖マリア病院 眼科 外来医長
福岡大学筑紫病院 眼科
村上華林堂病院 眼科
福岡大学病院 救急救命センター
福岡大学病院 眼科
愛知医科大学卒業
福岡県立嘉穂高校卒業
医師資格番号
医師免許番号 381664
保険医登録番号 福医29357