老眼と遠視は何が違う?矯正方法もあわせて解説
老眼とは、加齢による生理現象で引き起こされる “調節異常”のことを指し、遠視とは、水晶体の“屈折異常”のことを指します。
【この記事でわかること】
- 老眼と遠視の違い
- 老眼と遠視の矯正方法
- 老眼と遠視を放置すると起こること
- 疲れ目を軽減するために
- 老眼・遠視以外に視界がぼやける原因
- 遠視と近視で老眼のなりやすさに差はある?
近くのものを見る際に、「無意識に遠ざける」「目を細める」「かけているメガネを持ち上げる」などといった行動を無意識に行っていませんか?
これらは、加齢による“老眼”が原因である可能性が大いにあります。
そこで本記事では、混同されやすい老眼と遠視を比較し、その原因を徹底解説します。
矯正方法もあわせて解説していますので、「手元の見えにくさを解消したい」と感じている方は、最後までご覧ください。
老眼と遠視の違い
老眼と遠視は、どちらも手元が見えないことから混同されやすい症状ですが、まったく異なるメカニズムで発症します。
老眼が、近くのものだけを見るときにピントが合わないのに対し、遠視は、距離に関係なくそもそもピントが合いません。
「遠視は遠くがよく見える」と勘違いしている方も多いのですが、これは目が常に緊張した状態でピントを合わせているため、遠くが見えているだけなのです。
ここからは、老眼と遠視が引き起こされる原因を詳しく解説します。
老眼になる原因
老眼は、老化によって水晶体が弾力を失うことが原因で起こります。
30代から徐々に症状が出始め、40代半ばから進行する方が多い傾向にあり、加齢とともに誰もが自覚するものです。
私たちの目の中にある水晶体は、近くのものを見るときは厚くしてピントを合わせるという、カメラのレンズのような機能をもっています。
若いときは、水晶体が柔軟で簡単に厚みを変えることができるので、オートフォーカスのように、どのような距離からでもピントの調節が可能です。
しかし、老眼になると、水晶体が硬くなって弾力を失い、厚くなる機能がうまくはたらきません。
その結果、近くのものを見ようとしたときに、手元にピントが合わずに、ぼやけてしまうわけです。
つまり老眼とは、水晶体の硬化により、ピント調節に異常をきたしている状態なのです。
遠視になる原因
遠視は、目の奥行(眼軸長)が短いことや、水晶体のピント調節がうまくいかないことが原因で起こります。
遺伝的な要因があると考えられていますが、これらの異常が生じるメカニズムは残念ながら解明されていません。
人間は生まれたときから、強い遠視をもつ傾向にありますが、成長とともに眼軸長が伸びていくので、7歳前後で遠視がなくなるケースがほとんどです。
しかし、さまざまな要因で遠視が残る場合もあります。
重度の場合は、弱視や内斜視を引き起こすケースもあるため、注意が必要です。
老眼と遠視の矯正方法
老眼や遠視は、異なる原因によりピントの調節機能に異常をきたします。
ここからは、老眼と遠視ごとに異なる矯正方法を紹介します。
老眼の矯正方法
硬くなった水晶体の弾力を自力で取り戻すのは不可能なため、老眼鏡やコンタクトレンズを使用して矯正します。
老眼鏡には、手元を見るときだけ専用の“単焦点レンズ”と、手元と遠くのどちらも見えるように矯正する“多焦点レンズ”があります。
また、遠近両用タイプのコンタクトレンズでも、矯正可能です。
1枚のレンズの中に、近くを見るための度数と、遠くを見るための度数が別々に配置されているので、どのような距離でもストレスなく見ることができます。
老眼にくわえて、白内障を患っている方は、手術も検討の余地があります。
現在、矯正手術として主流なのは、2か所以上の距離にピントを合わせられる“多焦点眼内レンズ”を挿入する方法です。
白内障で濁ってしまった水晶体そのものを取り除いて、代わりにこのレンズを挿入し、老眼を矯正します。
水晶体自体を取り除くため、白内障と老眼のいずれも治療できます。
遠視の矯正方法
強度の遠視の場合は、凸レンズのメガネやコンタクトを用いることで矯正できます。
凸レンズを使用することで、近くのものでもピントが合いやすいように調節します。
老眼と同様に、白内障を併発している方は手術も有効です。
濁った水晶体の代わりに、その人に合った眼内レンズを挿入することで、白内障の治療だけでなく遠視も同時に解消できます。
老眼と遠視を放置すると起こること
老眼と遠視では、発症するメカニズムが異なることがおわかりいただけたかと思いますが、どちらも見えにくい状態にストレスを感じることは言うまでもありません。
絶えずピントを調節しようとする老眼や遠視は、矯正せずにそのまま放置すると、目の疲れだけでなく、体の疲れも引き起こしてしまいます。
その結果、仕事や日常生活にまで支障をきたします。
実は、肩こりや頭痛、吐き気の原因が、「目の見え方によるものだった」という事例は少なくないのです。
情報化社会の現代では、パソコンやスマホの長時間使用といった、目を酷使する機会も増えているので、目を守ることは生活の維持・向上に欠かせません。
疲れ目を軽減するために
疲れ目を軽減するためには、目の筋肉の“緊張”を取り除くことが鍵になります。
以下で挙げる方法を、日常生活で実践してみてください。
【疲れ目を軽減する方法】
- 画面を長時間見る際は休憩をはさむ
- 遠くを眺める
- 目を温める
- まばたきを意識的に行う
パソコンやスマホの画面を長時間見る場合は、姿勢にも気をつけつつ、こまめに休息をとることが大切です。
その際に、遠くをぼんやりと眺めれば、目の緊張が緩んで疲れを軽減させることができます。
また、目の周りをホットタオルなどで温めるのも効果的です。
血行が良くなり、筋肉の緊張がほぐれるので、リラックスにつながります。
さらに、日頃からまばたきを意識的に行うと、涙による目の渇きを防げるだけでなく、目の周辺の筋肉も緩むので、疲れが軽減します。
老眼・遠視以外に視界がぼやける原因
視界がぼやけてしまうのは老眼や遠視が原因ですが、ほかにも考えられるケースを以下で紹介します。
近視
近視とは、眼軸長が長すぎたり、角膜や水晶体の屈折力が強すぎたりして、目に入ってきた光が、“網膜より手前で焦点が結ばれてしまう”状態のことです。
近距離ははっきり見えますが、網膜まで光が届いていないため、遠距離はぼやけてしまいます。
遺伝因子と環境因子が複雑に絡み合って引き起こされるとされている近視ですが、はっきりとした原因は、遠視同様解明されていません。
乱視
角膜の表面に、“歪み”や“不規則なでこぼこ”が生じて、ピントが合いにくくなっている状態が乱視です。
ものを見るときに、ピントが1か所に集まらないので、常に文字やものが二重に見えたりぼやけて見えたりする現象が起こります。
特に暗い場所や夜間の、夜景や車のライト、月などがにじんで見えにくくなる傾向にあります。
ピントを常に合わせようと目が疲れてしまうため、見えにくさを感じたら矯正するのがよいでしょう。
乱視が引き起こされるのは、生まれつき角膜や水晶体の形が歪んでいる先天的な要因と、怪我や病気よって角膜が歪んだり、傷ついたりする後天的な要因があります。
遠視と近視で老眼のなりやすさに差はある?
老眼になる時期に、遠視や近視はまったく関係ありません。
老眼は加齢による生理現象なので、自覚する年齢に差はあっても誰にでも起こります。
ただし、遠視の人は老眼を自覚しやすく、近視の人は自覚しにくいといった傾向があるようです。
遠視は、遠くにピントが合っているので、近くのものはぼやけます。
一方で、近視は近くにピントが合っているので、手元のものはよく見えます。
つまり、手元がぼやける老眼は、遠視の方のほうが気づきやすく、裸眼でも手元がはっきり見える近視の方は気づきにくいのです。
なお、近視の方でも、メガネやコンタクトレンズで遠くが見えるように矯正しているにもかかわらず、手元が見づらくなった場合は、老眼が始まったサインといえるでしょう。
まとめ
本記事では、老眼と遠視の違いや原因、矯正方法などを詳しく解説しました。
老眼と遠視は、引き起こされるメカニズムがまったく異なります。
老眼は、水晶体の柔軟性が失われることによる調節機能の異常で起こりますが、遠視は、水晶体の屈折異常によって症状が現れます。
老眼や遠視は、メガネやコンタクトレンズ、手術などで矯正可能です。
どちらも、日頃からピントを合わせるために、目を酷使している状態なので、日常生活に支障が出始めたら矯正しましょう。
先進会眼科では、多焦点眼内レンズ手術による老眼の治療や、遠視の方でも矯正可能なICL(眼内コンタクトレンズ)治療を行っております。
手術による矯正をご希望の方は、ぜひ当院へご相談ください。
日本眼科学会認定眼科専門医
日本白内障屈折矯正手術学会 理事
先進会眼科 理事長
略歴
聖マリア病院 眼科 外来医長
福岡大学筑紫病院 眼科
村上華林堂病院 眼科
福岡大学病院 救急救命センター
福岡大学病院 眼科
愛知医科大学卒業
福岡県立嘉穂高校卒業
医師資格番号
医師免許番号 381664
保険医登録番号 福医29357