黄斑部の疾患とは?それぞれの疾患の症状と原因、治療方法を解説
網膜の中心に位置しており、非常に重要な役割を担っているのが黄斑部です。ただ、そんな黄斑部にも病気が発生することがあります。この記事では、黄斑部に発生する病気の種類や原因、初期症状などについて紹介します。
普段から眼の状態を気にかけ、病気の早期発見、早期治療へと繋げましょう。そうすることで、健康な視力を温存できる可能性が高まります。
黄斑とは
黄斑とは、眼の奥に位置する網膜の一部です。カメラで言うと、フィルムの役割を担う部分と言えます。黄斑は網膜の中央のことで、視野の中央部分の見え方に関係しています。網膜は十層からなり、動脈と静脈が多く集まって構成されているのが特徴です。視細胞と呼ばれる光を感じる細胞が神経と繋がり、脳へと情報を送ることで、始めて物を見ることができるのです。
この重要な黄斑部に病的な変化が発生すると、視力や視野、色彩感覚などに影響が出る可能性があります。そのため、眼科の診察ではすべての患者様の網膜の黄斑部をメインに、顕微鏡などの機器を用いて確認しています。
黄斑部の疾患は、定期的な眼科検診と自覚症状の変化に早く気づき、早期に治療を始めることが重要です。病気になった後の視力に影響するため、何か異変を感じたらすぐに医師の診察を受けるようにしましょう。
黄斑円孔
黄斑円孔とは黄斑部に穴ができてしまう病気です。眼の中は硝子体という透明なゼリー状の組織で満たされています。硝子体は眼の形状の保持や、外からの光を屈折させる役割があります。硝子体は加齢によって液化しますが、黄斑円孔はこの変化に伴って発生する可能性がある病気です。症状と合わせて原因をさらに詳しくご紹介します。
症状と原因
黄斑円孔は硝子体が加齢性変化により液化するときに、黄斑部が硝子体に引っ張られることが原因で発生します。これにより黄斑部の中央が盛り上がって剥離を起こし、最終的には円孔と呼ばれる穴が作られてしまうのです。
主な症状は以下の通りです。
- 視力低下:視力に影響が出る網膜の中心の病気のため、視力低下が比較的著しく、0.1程度まで低下する場合がある
- 変視:物がゆがんで見えること。中央部分にかけてへこんでいるような変視を自覚することが多い
黄斑円孔は硝子体の加齢性変化が原因で起きる病気のため、50歳以上の人に発生する可能性が高い病気です。普段から片方の眼を閉じてチェックするといった習慣を付けることで、早期発見に繋げられるでしょう。
治療方法
黄斑円孔の治療方法として硝子体手術が挙げられます。硝子体手術が主流になるまで、黄斑円孔には治療法がありませんでした。しかし最近では、硝子体手術と硝子体内にガスを注入する方法を併用して治療を行います。
早期の黄斑円孔であれば視力の回復が期待できます。そのため、症状を自覚したときには、なるべく早く眼科に相談するようにしましょう。
黄斑前膜
黄斑前膜は硝子体の後ろ部分と黄斑の前部分の間に膜が形成されてしまう病気です。これは硝子体の加齢性変化である液化に伴い、後部硝子体剥離が起こることが主な原因とされています。黄斑円孔と病名は似ていますが、両者には違いがあります。
症状と原因
原因は後部硝子体剥離のときに、後部硝子体皮質が黄斑部に残存して膜を形成することです。初期症状としては、軽度の視力低下やかすみ、ゆがみなどが挙げられます。黄斑前膜だけでなく後部硝子体剥離の初期症状を放置することで、さまざまな病気を引き起こす可能性があるため注意が必要です。
後部硝子体剥離に伴い発生する可能性があるほかの病気は以下の通りです。
- 網膜剥離:網膜を牽引し剥離させてしまう
- 硝子体混濁:硝子体剥離のときに炎症を起こすと混濁する場合がある
- 黄斑円孔:黄斑部を牽引して穴を形成させてしまう
自覚症状のセルフチェックも重要ですが、最近はOCT(三次元眼底画像解析装置)という検査機器が普及したことで、病気の発見が比較的簡単になりました。眼科を定期受診することで早期発見が可能です。
治療方法
黄斑前膜の治療法として、硝子体手術で膜を取り除く方法が挙げられます。ただし、黄斑前膜があっても視力障害や変視症がひどくなく、生活に支障がない場合もあり、その場合には、手術を選択せずに眼科での定期的な検査と診察で様子を見ることがあります。いずれにしても放置せず眼科での説明を受け、日常的に見え方の変化に気を付けることが重要です。
黄斑変性
黄斑変性は黄斑部が萎縮したり、新生血管と呼ばれる非常にもろい血管が発生してしまったりする病気です。黄斑変性は加齢に伴い発症する病気で、「加齢黄斑変性症」が正式名称です。主に「萎縮型」と「滲出型」に分けられます。
- 萎縮型:黄斑部の萎縮がゆっくりと進行する
- 滲出型:新生血管と呼ばれるもろい血管が発生してしまい、黄斑部にダメージを与える
また、萎縮型から滲出型へ移行する場合もあり、いずれの型でも経過観察が必要です。最近では、適切な治療方法があるため、早期発見・早期治療で良い結果になる可能性が高くなります。
症状と原因
加齢黄斑変性症の原因を1つに特定するのは困難です。喫煙、紫外線、遺伝、生活習慣などが複合的に重なり発症する、加齢性の疾患であると言えます。
症状は視力低下、変視症、中心暗点が挙げられます。私たちは普段、両方の眼を開けて生活しているため、片方のみの眼に症状が出ているときには、気が付かない可能性があります。そのときに有効なのがセルフチェックです。手順は以下の通りです。定期的な眼科受診に加えて、下記の手順を試してみることをおすすめします。
- 眼から30cm程度の場所に格子や直線の描かれた図を用意する
- 片方の眼を手で隠す
- 真ん中の位置を決め、ゆがみや暗点がないか確認する
- 反対の眼でも同様に確認する
治療方法
黄斑変性の治療法として、代表的なものを紹介します。
- 抗VEGF療法:血管内皮増殖因子に対する薬を硝子体注射する治療法
- レーザー光凝固術:視力に影響の出ない場所の新生血管をレーザーで焼き固めることで、中心視力を温存する治療法
生活習慣病の予防に加えて、眼科の定期検診とセルフチェックで黄斑変性に備えましょう。
黄斑下血腫
黄斑下血腫はいわゆる血マメが黄斑部に発生する病気です。加齢黄斑変性症やそのほかの疾患が原因で起こります。黄斑下血腫の原因となる病気は以下の通りです。
- 加齢黄斑変性症
- 網膜細動脈瘤
- 外傷
上記の疾患によって、黄斑部に血腫が発生している状態のことを黄斑下血腫と言います。
症状と原因
黄斑下血腫の症状は加齢黄斑変性症と同様で、視力低下や変視症、中心暗点などです。加えて、血腫の範囲に相当する視野障害が出る可能性もあります。
血腫ができてしまう原因は疾患によって異なりますが、加齢黄斑変性症によって発生した新生血管の破裂が代表例と言えるでしょう。
治療方法
黄斑下血腫の治療法として、硝子体手術で血腫を取り除く方法や、ガスを注入して血腫の場所を移動させる方法が挙げられます。加齢黄斑変性が原因であれば、血腫ができる前に治療を開始し予防することが望ましいですが、血腫が発生しても早期に治療することで、視力が回復する可能性があります。
加齢黄斑変性や網膜細動脈瘤があると診断を受けた方で、見え方が急に変化したようなときには黄斑部で出血が起こっている可能性もあるため、できるだけ早く眼科を受診するようにしましょう。
黄斑の病気は早期発見が大事
黄斑部の病気は視力に関係するものです。日常生活に影響する病気だと言えるでしょう。一度ダメージを受けてしまった細胞や神経を元に戻すことは難しいことだと言えます。そのため、黄斑部に生じるさまざまな病気を早期発見、早期治療することが重要です。
症状があるときには、速やかに眼科で診察を受けるようにしましょう。また、日ごろから眼の状態に気を付けることも重要です。
まとめ
黄斑部の疾患について紹介しました。先進会眼科では、黄斑部の疾患に対する治療を行っております。加齢黄斑変性症に対する有効な治療法は、抗VEGF薬の硝子体注射です。症状が悪化してからでは効果が出にくくなる可能性があるため、早期治療が重要です。また、施術可能な硝子体手術は低侵襲に配慮しており、切開創がとても小さいのが特徴です、1mm以下の切開創を白目に3箇所作ることで患者様の負担に配慮しております。
ほかにも検査や手術の機械は新しい物を取りそろえております。眼に関する違和感があるときには、ぜひ先進会眼科へご相談ください。
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日本眼科学会認定眼科専門医
日本白内障屈折矯正手術学会 理事
先進会眼科 理事長
略歴
聖マリア病院 眼科 外来医長
福岡大学筑紫病院 眼科
村上華林堂病院 眼科
福岡大学病院 救急救命センター
福岡大学病院 眼科
愛知医科大学卒業
福岡県立嘉穂高校卒業
医師資格番号
医師免許番号 381664
保険医登録番号 福医29357