治療的表層角膜切除術(PTK)とは?症状と治療について解説します
何らかの原因で角膜混濁と診断され、先進会眼科東京・先進会眼科名古屋・先進会眼科大阪・先進会眼科福岡の各院で治療目的で患者さんの紹介を受けることも多くなってまいりました。患者さん自身も角膜混濁のことや治療のことについて馴染みがないようです。そこで今回は角膜混濁と治療的表層角膜切除術(PTK)について紹介します。
治療的表層角膜切除術(PhotoTherapeutic Keratectomy, PTK)とは、進行した角膜混濁により視力が低下した場合、角膜上皮から角膜の混濁に対し、エキシマレーザーという種類のレーザーを用いて角膜の混濁した部分を削り取り、角膜の透明性を向上させ、視力の改善を目指す手術です。
エキシマレーザーを照射することによって、角膜の表層から実質の一部を切除する手術ですが、角膜の全てを除去するわけではなく、視力に影響している混濁した部分のみ除去します。不正乱視が残る場合には、追加としてレーザー屈折矯正手術が必要になる場合もあります。
今回は、治療的表層角膜切除術(PTK)について詳しく説明していきます。
治療的表層角膜切除術(PTK)の治療の流れ
まずは、角膜混濁の原因と治療的表層角膜切除術(PTK)の流れを解説します。
角膜の混濁の原因
角膜実質炎や角膜感染症等により角膜の組織に障害をきたすと、透明であるはずの角膜が白く濁ります。
角膜の混濁の原因には先天性もしくは遺伝性のものや、炎症性のものがあります。たとえば、炎症が原因の角膜混濁には、梅毒・トラコーマ・ヘルペス・結核・ブドウ球菌等が原因となります。
角膜が白く濁ることによって眼内に光が入りにくくなるため、全体が暗く、ぼんやりとしたゆがんだ見え方になります。
診察を受ける
レーザー治療の前に、各種検査と診察を行い、適応となる病態かどうか、どのように治療を行うのが良いかを判断します。続いて、血液検査や結膜嚢培養検査を行います。
手術3日前の朝から手術当日までの間、抗菌薬と消炎剤の点眼をします。
手術を受ける
手術自体は通常日帰りで可能です。混濁の程度によっても違いますが、レーザーの照射時間は約1分前後です。手術は、点眼麻酔をしますので痛みは感じませんが、麻酔が切れると、痛みやしみる、異物感を覚える場合があります。上皮が再生するまでこの痛みが続きます。
角膜表面の上皮細胞が再生するまで1~2週間かかり、一時的に治療前より視力が低下します。また、術後角膜上皮が再生するまで、治療用のソフトコンタクトレンズを装着し、角膜を保護する必要があります。
術後は2~3ヶ月の間点眼治療が続きます。
治療的表層角膜切除術(PTK)の詳細
角膜の混濁の度合いにもよりますが、エキシマレーザーの照射時間は約1分前後です。角膜の表層を直径6㎜前後、深さ0.1㎜~0.15㎜の範囲で削ります。
PTK手術の内容
治療的表層角膜切除術(PTK)を行うと、角膜の上皮や実質の一部が削られるため、角膜の厚みが減り、もともと屈折度数が正視に近い人(いわゆる視力が良い人)は遠視化します。一方でもともと近視の人は近視が軽減されます。切除術で角膜を削る場合にも限界がありますので、表層の濁りであれば視力の向上も望めますが、深層に濁りがある場合には角膜移植手術が必用になります。
エキシマレーザーを使って治療をする代表的な角膜疾患の例
・角膜ジストロフィ
コレステロールやカルシウム等の無機物が角膜に沈着することによって、両目の角膜が白く濁る遺伝性の病気です。軽度の場合は無症状ですが、年を重ねるほどにまぶしさや、視力低下を感じるようになります。
・帯状角膜変性
角膜の横方向にある角膜上皮下にカルシウム塩が沈着してしまい、帯状に角膜が混濁する病気です。混濁が黒めの部分にかかってくると視力低下をきたし、そして病状が進行すると痛みが出てくる場合もあります。
PTKが適応となる例と適応とならない例
治療的表層角膜切除術(PTK)が全ての症状に適応されるわけではありません。
PTKが適応となる例
以下の症状にはPTKが適用されます。
角膜ジストロフィ―
帯状角膜変性
ザルツマン(salzman)角膜変性
感染や外傷後の角膜白斑
再発性角膜上皮糜爛
難治性角膜感染症(アカントアメーバー角膜炎)
等
治療的表層角膜切除術(PTK)が適応とならない例
一方で、以下の症状はPTKが適用となりませんが、症状によりますので一度当院にご相談ください。
膠原病
免疫不全
自己免疫疾患等の疾患がある人
重症のドライアイ
中層や深層のみに混濁がある場合
向精神薬を服用している
治療的表層角膜切除術(PTK)のメリット
下記にPTKのメリットを挙げます。
①角膜疾患の患者に行う治療なので保険診療ができる
②角膜の濁りが取り除かれることにより、結果として近視の屈折矯正手術のように角膜を平坦にします。したがって裸眼視力が向上する可能性が高くなる
③強度の近視の方は裸眼視力が向上する場合がある
治療的表層角膜切除術(PTK)のデメリット
下記にPTKのデメリットを挙げます。
①手術後約1週間は角膜上皮が不完全なため見えづらく、痛みを伴う場合がある
②手術後は角膜混濁の減少によって眼のかすみは軽減され、明るく見える一方、遠視化によって裸眼視力が低下する可能性がある
※眼鏡で矯正することは可能
③角膜上皮が完全に再生するまでは痛みを伴い、視力の改善には時間を要する
※視力の安定には数ヶ月かかる場合もある
⑤手術後にピントの位置が変わり、現在かけている眼鏡が合わなくなる場合がある(角膜の治癒した後に眼鏡を作成し直す)
⑥白内障がある場合は治療的表層角膜切除術(PTK)の手術だけではなく白内障の手術をしないと視力が改善しない可能性がある(白内障がある場合には治療戦略と計画をしっかり立てる)
治療的表層角膜切除術(PTK)後の注意点
次に、手術を受け終わった後の注意点を説明します。
混濁の除去量には制限がある
手術で切除できる角膜量には制限があり、全ての混濁を除去できるわけではありません。また、レーザーで角膜上皮を剥離するため、術後に痛みがあります。
治療用コンタクトレンズを装着する必要がある
上皮が再生されるまでの約1週間はコンタクトレンズを装着することになります。また、流涙や強い瞬き等によってコンタクトレンズがずれたり、外れたりすることがあり、その場合は強い痛みや異物感が生じます。外れた場合はそのままコンタクトレンズをせずにいるか、担当医がコンタクトレンズの再装着を行います。
なお、治療用ソフトコンタクトレンズを装着しても痛みや異物が入ったような異物感が出る可能性があります。痛みは数日から1週間程度で収まってきますが、症状が強い場合は痛みを抑える点眼や飲み薬等も使用します。
眼鏡を作り直す必要がある
手術後は角膜を削ることによって遠視化が起こります。近視の人は少し近視が軽減するという良い点もあります。
どちらにしろ、視力に変化が生じる可能性が高いため、眼鏡をかけている方は治療から3ヶ月程経って安定してから眼鏡を作り変えなければならない場合もあります。
合併症について
治療的表層角膜切除術(PTK)の合併症として、角膜感染症が起こる場合があります。角膜の上皮を削るため感染リスクがあり、もし感染症が発症すると角膜に瘢痕や混濁が残り十分な視力が得られないリスクがあります。細菌や真菌の感染予防のために、抗生物質の点眼を行います。
治療的表層角膜切除術(PTK)の治療費
PTKは平成23年4月の診療報酬改定により保険適用となり、保険診療で受けられます。ただし、エキシマレーザーの保有施設は限られており、かつ保険診療で受けられる施設の要件も以下のように定まっておりますので、事前に保険診療の要件を満たしているか確認しましょう。
エキシマレーザーによる手術費用は、健康保険3割負担の場合の自己負担額として約32,000円かかり、これに加えて手術前の検査代・診療費用や手術後の通院費用や投薬代が必要となります。
まとめ
角膜混濁は原因によっては治療可能な病態です。角膜混濁の可能性がある場合は、早めに眼科医に相談をしてください。早期に治療を行い、適切な治療戦略を立案することで、以前のような見え方が取り戻せる可能性があります。
当院ではコンタクトレンズの処方時に、角膜混濁があると言われた患者さんからの問い合わせやエキシマレーザーを保有していない医療機関からの紹介が多く、治療のみの通院いただき術後検診はお近くの医院でというケースもございます。エキシマレーザーであれば角膜混濁の除去をスムーズに行えます。
角膜混濁を診断された患者さんご本人、加療が必要な患者さんをお持ちの医療機関の先生、治療的表層角膜切除術(PTK)が適切な施術と判断される場合が多くあります。まずはご相談ください。
出典:日本角膜学会
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日本眼科学会認定眼科専門医 医学博士
先進会眼科 福岡 院長