両目が異なる方向を向いている「斜視」とは?主な原因・治し方を解説

斜視とは、目の向きに異常がある病気のことをいいます。子供から大人まで発症する可能性があり、原因もさまざまです。そのため、原因に合わせた治療が必要です。
この記事では、斜視について詳しく解説します。斜視は、小児で発症した場合は注意しなければ弱視になってしまう可能性があります。斜視の原因、治療法をご紹介しますので、参考にして治療の必要があると感じたら眼科受診をご検討ください。
斜視とは
斜視とは目の向く方向に異常があり、正面以外を向いてしまう病気です。
物を見ているときに片方の目はその物を見ているのに、もう片方の目が違う方向を向いている状態のことをいいます。生まれつきの斜視の方もいれば、大人になってから斜視になることもあり病態は人によりさまざまです。
斜視になる原因もさまざまで、事故やケガなどが原因の場合や筋肉の異常もあります。しかし斜視になる原因のほとんどは視力や、屈折値(眼鏡の度数)と関係があり複数の原因が重なって斜視を発症することも可能性として考えられます。
斜位との違い
斜位は斜視とは異なり、両方の目で物を見ているときや日常のほとんどは正常な状態です。
片目で物を見ているときに、隠れている片方の目が違う方向を向いていることがあります。このことを斜位といい、私たちのほとんどは多少の斜位があり、日常生活で困ることはありません。
斜位は基本的に治療の対象にはなりません。しかし、片目が異常な方向を向いている時間があるときや、子供がテレビを見ているときに片方が違う方向を向いているときなどは眼科受診が必要です。
また斜位から斜視になる状態になり、さらには常に斜視である状態へと変化する可能性も考えられます。子供の場合は特に気を付けて観察したほうが良いでしょう。
偽斜視との違い
偽斜視は、斜視ではありません。斜視ではないのに見た目が斜視のように見えることをいいます。偽斜視の原因は、黒目が内側によって見える、目の位置が顔の外側に位置しているなどが挙げられます。
赤ちゃんや子供は鼻が低くて目と目の間が離れているので、内側の白目部分が隠れて見えないことがあります。これを内眼角贅皮といいますが、これが原因で斜視のように見えます。斜視ではないので心配はいりません。
定期的な検診などで「偽斜視ですね」といわれた場合は、過剰に心配する必要はないでしょう。
斜視の種類
斜視はさまざまな視点から分類分けがされています。
《目の向く方向別による分類》
- 水平斜視:外斜視、内斜視
- 上下斜視:上斜視、下斜視
- 回旋斜視:外方回旋斜視、内方回旋斜視
《発症時期による分類》
- 先天斜視
- 後天斜視
- 急性斜視
上記の他には、眼球運動障害の有無によって決まる「共同性斜視」と「麻痺性斜視」、目の調節機能が影響しているかどうかによって決まる「調節性斜視」と「非調節性斜視」があります。これらの他にも斜視は、状態や原因によりさまざまないわれ方をします。また、先天性内斜視や片眼性恒常性外上斜視など組み合わせていわれたりすることもあります。
斜視になる主な原因
斜視になる原因はさまざまですが、主な原因は以下のとおりです。
- 筋肉や神経の異常
- 強度の遠視
- 両眼視の異常
- 視力不良
ここからは、それぞれの原因について詳しく解説します。
筋肉や神経の異常
斜視の原因のひとつに、筋肉や神経の異常があります。
目を動かして見たい物を見るために、脳からの指令を伝える神経と筋肉があります。それらが外傷や炎症によって脳からの指令が断絶されたり、筋肉や目の周辺の骨にダメージを受けたりことも斜視の原因につながります。また、生まれつき一定方向の筋肉が強すぎたり弱すぎたりすることも、斜視の原因のひとつです。
強度の遠視
遠視とは、遠くにピントが合うが近くが見えにくい目のことをいいます。
遠視の場合、近くを見るために目の調節力を使ってピントを合わせる必要があります。近くにピントを合わせるのと同時に、寄り目になることが関係して内斜視になってしまうことがあります。
視力が発達する小児に発症しやすい斜視で、詳しく検査して適切なメガネを使用する必要があります。
両眼視の異常
人間は2つの目で見ることで、立体的に見ることができます。
しかし、片方の目の視力が悪いことや目の大きさに左右差があることなどが原因により両目で合わせて見ることができなくなることがあります。
このことが原因で片方の目が斜視になることが考えられ、放置することで斜視になっているほうの目が弱視になってしまうことがあるので注意が必要です。また、片方の目は網膜の中心で像を見ているのに、もう片方の目は網膜の違う部分で像をとらえることがクセ付いてしまうことも、斜視の原因になります。
弱視とは、眼鏡をかけても良好な視力を得られない状態のことです。生まれつきの眼疾患などが原因の場合と、乳幼児期に正常な視力の発達が得られなかったことが原因です。斜視と弱視は密接な関係がありますので、斜視かもしれないと感じた際は眼科を受診しましょう。
視力不良
視力が悪いことは、斜視になる原因です。
クリアな像を得られない場合、見る目標物を定めることが難しくなります。そのことが原因で目を向ける方向に異常が生じ、斜視になるのです。両目ともに視力が悪い場合や、片方の目の視力が悪い場合も同様に斜視になる可能性があります。
弱視のように視力の発達に異常があって視力がよくない場合や、眼疾患などで大人になってから健全な視力が得られなくなったときに斜視を併発することがあります。
斜視の治し方
斜視に対してはさまざまな治療法があります。
- 眼鏡やコンタクトレンズを使用する
- 遮閉法をおこなう
- プリズムレンズを使用する
- 視能訓練を受ける
- ボツリヌス治療を受ける
- 手術を受ける
ここからは治療法について詳しく解説します。
眼鏡やコンタクトレンズを使用する
眼鏡やコンタクトレンズを使用して斜視を治療することには目的があります。
- 視力を良好にして、両方の目で物を見られるようにする
- 目の調節力を使わないようにする
- 視力の発達をうながす
これらのことが斜視の治療につながります。場合によっては、長い時間をかけての視力検査が必要になるかもしれませんが斜視と弱視の治療に眼鏡はとても大切です。
遮閉法をおこなう
遮閉法とは、アイパッチという眼帯を用いて斜視じゃないほうの目を隠す治療法です。
斜視になっているほうの目は、物を見ないクセがついてしまい、視力が発達しない可能性があります。1日に数時間程度、斜視じゃないほうの目を隠し、斜視のほうの目を強制的に使用させることで、視力を発達させるのです。視力の発達とともに両方の目で物を見ることができるようになれば、斜視も治ります。
プリズムレンズを使用する
プリズムレンズとは、光を曲げることができるレンズです。
大人になってから斜視を発症した場合、複視という物が二重に見える症状がでます。この症状があると日常生活は難しいので、プリズムレンズを使用して斜視の角度に合わせて光を曲げ、複視を解消する方法があります。
この方法は、斜視を根本的に治療するのではなく、斜視によって生じた症状をなくして生活できるようにする方法です。
視能訓練を受ける
視能訓練とは、国家資格の視能訓練士によっておこなわれる訓練です。
斜視訓練では、間欠性外斜視という疲れたときや、ボーっとしたときに片目が外を向いてしまう人に、寄り目の訓練などをおこないます。視能訓練士による検査や訓練は眼科によってやり方が違いますが、斜視の治療のひとつです。
ボツリヌス療法を受ける
ボツリヌス療法とは、ボツリヌス菌から産出されたボツリヌス毒素を眼筋へ注射する治療法です。
ボツリヌス菌には、神経の伝達を阻害する作用があり、眼筋の作用を弱める効果があります。目が外を向いている外斜視には外へ引っ張る作用のある外直筋に注射をします。
ただし、効果は一時的なので、数カ月おきに治療を継続する必要があります。
手術を受ける
斜視は手術で治すことがあります。
状態が不安定な場合は適用になりませんが、症状が固定されている場合は手術が可能でしょう。整容的に手術をおこなうこともあります。
手術の方法は、眼筋の位置を変える手術です。斜視手術についてさらに詳しく知りたい方はこちらのページをご覧ください。
斜視に関するよくある質問
ここからは斜視に関するよくある質問を詳しく説明します。
- 斜視の場合の見え方はどのようなもの?
- スマホの過剰使用で斜視になる?
斜視の場合の見え方はどのようなもの?
斜視の場合の見え方には2パターンあります。
- 複視:二重に見えること
- 抑制:斜視のほうの目の見え方を脳が抑制して見えなくしている状態
突然斜視になった成人の人は、複視を感じます。乳幼児期に斜視になって治療がなされなかった場合、斜視のほうの目の見え方は、脳に抑制されて見えなくなっている範囲が大きい可能性があります。
スマホの過剰使用で斜視になる?
大人がスマホを過剰に使用することで斜視になることは考えにくいでしょう。
しかし、視機能の発達途中で感受性が豊かな子供の時期にスマホを過剰に使用することは、斜視を発症する危険性があります。それに加えて、子供の目の発達には太陽の光や遠くを見ることが欠かせません。少しであれば問題はありませんが、過剰に使用することは控えたほうが良いでしょう。
まとめ
斜視は、だれにでも起こる可能性のある病気です。しかし、子供であれば訓練や適切な眼鏡を使用することで治療が可能です。大人であっても手術などたくさんの治療の選択肢があります。
斜視の種類は多く、病態は人それぞれで原因により正しい治療法を選択する必要があります。視能訓練などができる視能訓練士が在籍している眼科を選んで受診することをおすすめします。
先進会眼科では視能訓練士が多数在籍しております。また、斜視手術や他の斜視に対する治療法も選択が可能です。目の向きが気になる人はぜひ一度ご来院ください。

日本眼科学会認定眼科専門医
日本白内障屈折矯正手術学会 理事
先進会眼科 理事長