斜視の手術を徹底解説!種類ごとの原因や手術のリスク、費用を紹介

「なんとなく人と視線が合いにくい」「鏡で見ると眼の位置がずれている」と思った方、それは斜視があるのかもしれません。今回はそもそも斜視とは何か、斜視の症状や原因、そして斜視の治療法、特に手術についてまとめました。
斜視の手術については方法や費用、リスクに加え、大人でも手術ができるのかどうかなどといった細かい点も併せて解説します。
斜視とは
斜視とは、両眼が同じ方向を向いていない状態のことです。物を見ようとする時に、片目は正面を向いていても、もう片目が違う方向を向いてしまっており、左右の視線が合いません。
斜視は人口の約3%にみられるとする統計もあり、決して珍しい病気ではありません。
斜視では、両方の眼でものを見ることによって立体感や奥行きを感じる働き(両眼視機能)が障害され、精密な立体感覚や奥行き感が低下します。乳幼児期に斜視があると、斜視のある側の眼を使わなくなるため両眼視機能が育たなかったり、弱視になったりします。
斜視の症状
斜視自体では症状がないことが多いです。目を動かす神経や筋肉の異常で起こってくる場合には、ものが二重にだぶって見える複視が現れることがあります。
外斜視では視線を合わせるのに疲れを感じ、肩凝りや頭痛の原因になることがあります。また、斜視の程度や視力によっては顔を斜めにしてものを見ることがあるのが特徴です。
斜視の種類
斜視の種類の分け方は、色々な方法があります。
原因による分け方として、眼の筋肉の麻痺によるもの(麻痺性斜視)とそれ以外のもの(共同性斜視)の2種類があります。
一般的に斜視と呼ばれるのは共同性斜視であり、眼を動かしても左右の眼の視線が合わず斜視の角度は変わりません。
また、常に斜視になっているのを恒常性斜視、ときどき斜視になるのを間歇性斜視といいます。
眼の位置による分け方として、片目が正常な位置にあるときに斜視の側の眼がどの方向にずれているかによって、以下のように分けられます。
- 内側に向いてしまっている状態=内斜視
- 外側に向いてしまっている状態=外斜視
- 上側に向いてしまっている状態=上斜視
- 下側に向いてしまっている状態=下斜視
また、本当は両眼の視線がそろっていて斜視ではないのに、見かけ上斜視に見えるものを偽斜視と呼びます。成長に伴い顔立ちがはっきりしてくると、目立たなくなることがほとんどです。
斜視と弱視の違い
斜視と弱視は同時に現れることもあるので混同しがちですが、全く別のものです。斜視とは左右の眼の向きがずれていること、弱視は発達の過程で視力が悪い状態で止まってしまい、視力や両眼視機能が落ちることを言います。
生まれつき斜視のある場合は、斜視になっている目が使われないため視力が発達せず、弱視になるのです。これを斜視弱視といいます。
斜視の原因
斜視の主な原因として、眼を動かす筋肉や神経の病気、目や脳・全身の病気などの他に遠視、両眼視の異常、視力不良などさまざまなものがあげられます。子どもの斜視は生まれつきのものも多く、原因がはっきりしないこともよくあります。
原因がわかっているものとして比較的多いのは、脳腫瘍、甲状腺眼症、重症筋無力症、ウィルス感染などがあります。若年者では多発性硬化症などの重篤な病気が見られることがあります。
高齢者では微小循環障害や脳梗塞・脳動脈瘤など頭蓋内疾患によるものが多いです。また白内障の手術や交通事故など、外傷によって斜視が起こることもあります。
斜視の手術
斜視の手術は、視力や両眼視機能を回復させるために行う場合と、見た目の違和感をなくすために行う場合の2通りがあります。子どもと大人では、手術に適切な時期などが異なりますが、一般的には適切な治療を行っても半年を経過して斜視が残存した場合には、斜視手術の適応となります。
斜視の手術方法
斜視の手術方法は、眼球についている筋肉を移動させて、眼の位置を治すというものです。
眼には6つの筋肉がついており、斜視の眼の向きに応じて、筋肉の位置をずらしたり、筋肉を縫い縮めたりします。手術のやり方自体は、子どもも大人も変わりありません。
例えば内斜視の場合は、「外直筋を短く切る、もしくは縫い縮める」、もしくは「内直筋を後ろにずらす」ことで、斜視を改善できます。眼の状況によって、複数の筋肉を同時に処置することもあります。
子どもの場合
子どもの手術の大きな目的は、両眼視機能の正常な獲得と弱視の予防です。斜視の種類によって適切な手術時期は異なりますが、生まれつきの乳児内斜視の場合はできれば生後1年以内、遅くとも2歳までに手術をすることが望まれます。
よく見られる斜視の一つである間欠性外斜視の場合は、小学校入学前後に手術を行うことが多いです。
斜視の手術自体は一つの筋肉につき20〜30分程度と短時間で終わるので、点眼麻酔で実施できます。ただし、乳幼児〜小学生の場合は手術中にじっとしていることが難しいため、ほとんどの場合は全身麻酔が必要となります。全身麻酔を実施した場合は、経過観察のため入院が必要です。
大人の場合
大人の場合は、外見上の問題はもちろんのこと、眼の位置がずれていることによる複視や眼精疲労などの症状があれば、斜視の手術の適応があるといえます。糖尿病や高血圧、頭の病気など他の原因で起こる斜視については、適切な治療を受けてから6ヶ月以上斜視が改善しない場合に手術を検討します。
ただし頭の中の血管が詰まって目を動かす神経の働きが悪くなった場合など、数ヶ月ほどで自然に良くなることもあります。また目の筋肉の異常などが原因の場合は、飲み薬の効果が期待できることもありますので、必ずしも全員に手術が必要なわけではありません。
実際の手術は、子どもと同様1つの筋肉の処理に20〜30分程度と短時間で終わるため、大人の場合は点眼麻酔で日帰り手術が可能です。
斜視の手術費用
斜視の手術は、健康保険の適応となります。斜視の種類や程度、年齢などによって手術方法および必要な検査、手術後の投薬内容などが違うため、費用は多少前後する可能性があります。一般的な斜視の手術の費用は以下の通りです。
- 健康保険 3割負担の方:片眼30,000~50,000円程度
- 老人医療 2割負担の方:片眼20,000~35,000円程度
- 老人医療 1割負担の方:片眼10,000~20,000円程度
この他に、手術前後の検査や診察・投薬の費用として数千〜数万円の自己負担が見込まれます。
斜視手術のリスク
斜視手術によって斜視のほとんどは改善が見込めますが、少し斜視が残ったり、逆に矯正しすぎて逆の側に目が寄る可能性があります。治したずれが戻る斜視再発もそれなりの確率で起こるので、複数回の手術が必要となることがあります。
斜視による複視や視力低下などのために仕事や日常生活に支障が出ることがなければ、見た目の結果にこだわりすぎないのも重要なポイントです。
手術以外の斜視の治療方法
手術以外の斜視の治療方法には、コンタクトレンズ・メガネを使う方法、遮閉法、プリズム装用、ボツリヌス療法などがあります。
コンタクトレンズやメガネは、斜視の原因となっている遠視や近視を矯正し、両眼で正常に見えるようにして両眼視をさせる方法です。遠視が原因となる調節性内斜視、左右の度数の違いによる屈折性不同視が原因となる斜視などに行われます。
遮閉法は、斜視でない方の眼を眼帯などで遮閉し、斜視の側の眼にものを見る力をつけさせる方法です。不同視のある弱視、斜視が良い適応です。
プリズム装用は、光を一定方向に曲げるプリズムをメガネに取り付けて、斜視の側の見え方を正常の側と同じくする方法です。斜視自体が治るわけではありませんが、両眼視機能を向上させます。
ボツリヌス療法は、ボツリヌストキシンを注射して眼の筋肉を麻痺させることで、眼の位置のずれを治す方法です。数ヶ月毎に繰り返し治療をおこなう必要があります。
まとめ
以上、斜視についてまとめました。斜視は見た目でわかるので気にされている方も多いのですが、手術を含めた適切な治療で、改善が見られることが多いです。
また、特に大人はほとんどの場合が、治療が必要ありません。しかしながら突然出てきた斜視の場合は重大な病気が隠れていることがあります。
自分、もしくは家族が斜視ではないかとお考えの方は、まず本当に斜視があるかどうか、あるとすればその程度について、正確な診断を受けることが適切な治療への第一歩です。ぜひ一度当院へご相談ください。

日本眼科学会認定眼科専門医
日本白内障屈折矯正手術学会 理事
先進会眼科 理事長